岡山県玉野市に本社を置く「株式会社NICS」は、情報システムの開発やネットワーク機器の販売を行う企業です。
同社は2018年からRPAを導入。主にデータの自動入力や照合の作業でRPAを活用した結果、年間約100時間の工数削減に成功しています。
今回は、同社にRPAを導入する際の経緯などをシステム営業部の佐用さんにお話を伺いました。
企業名:株式会社NICS
URL:https://www.nics.ne.jp/
導入したRPA:SynchRoid(ソフトバンク)
自動化した業務:データベースへのデータ入力、照合など
導入前の課題:データの手入力や手作業での移動、目視での照合などで工数がかかる。
導入後の変化:入力ミスと作業時間が大幅に削減。空いた時間を社員教育に充てられるように。
社員の業務負荷の軽減と、将来的に販売も見据えてRPAを導入
佐用さん:当初はソフトバンク社のRPAツールであるSynchRoidを導入しているのですが、将来的にSynchRoidを販売するという目的のもとにライセンスを購入しました。ですので、社内でまずはRPAを学び、社内の課題をRPAで解決し実績を作ることからはじめました。
当社はシステム開発の会社ですから、ほとんどの社員がシステム本部に所属しています。まずはプログラミングの知識もある、システム本部の方で課題を抽出し、検討を進めていくことにしました。
出てきた課題の一例として、一人の社員が見積対応から手入力、お客様対応などさまざまな業務を抱えていることが挙げられました。
その他の属人的な業務についても、一部をRPAで自動化することで時間短縮を行い、手が空いた時間を若手社員の教育や指導、業務の引継ぎに充てられないかという考えのもと、導入フローを検討していきました。
データの登録やチェック、修正作業を自動化して年間約90時間以上を削減
佐用さん:お客様からお預かりしたMicrosoft Excelデータを登録する作業があるのですが、それを自動的に行えるようにしました。所定のフォルダに溜めておいたエクセルデータをRPAが自動で登録するといったような流れです。これで年間約50時間以上の削減ができました。
それから、データベースのシステムを構築する中で、設定が随時変わっていくのですが、設計書の構造と実際に定義されているデータベースが合っているかどうか?のチェックもRPAで自動化しました。
この作業は社員が目視で行っていたのですが、自動化したことにより年間40時間以上の削減になりました。
加えて、給与計算にもRPAを導入しています。
以前は日報システムから勤怠管理のデータを紙に印刷したあとに総務がチェックをし、その内容を給与システムに手動で入力していました。
そこにRPAを導入したことにより、日報システムからデータをダウンロードして所定のフォルダに入れるだけで給与システムに入力され、給与計算まで自動で完了するようになりました。
人が担うのは最終チェックだけになり、入力ミスは手動で入力していたときに比べて約99%削減することができました。
給与計算については時間としては月2~3時間の削減ですが、人的ミスはなくなるので時間の削減以上の効果を感じています。
また、以前は給与計算が短期間に集中して業務が逼迫していたのですが、RPA導入後は余裕を持って給与計算業務を進められるようになったと思います。
開発はe-learningで学習。通常業務をこなしながら3ヵ月で一通りの開発が可能に。
佐用さん:当社では特にそういったことはなかったと思います。業務の運用が変わるということもありませんでしたし、業務を自動化することに対して、社員から何か否定的な意見が出たこともありません。導入は割とスムーズに、トラブルなく進められました。
佐用さん:最初はプログラミング経験のある社員が一人で開発を行いました。その際、ロボットを作りはじめるまでの要件定義や、現場での課題のヒアリングや打ち合わせには時間をかけました。
ただ、自動化する業務の範囲が決まればあとは開発をするまででして、約1週間ほどで設計から開発、テストまで終えることができています。そうやってまずは社内でミニマムに運用した後、クライアントに向けて本格的な開発ができるチームを作りました。
学習については、最初は社員全員がRPAの開発経験がありませんでしたので、SynchRoidに付随するe-learningで操作を覚えていきました。
通常業務をこなしながら、約3ヵ月ほどで一通りのロボットの開発ができるようになったと記憶しています。ただ、クライアントの環境によっては動作させるのに難しい技術が必要な場合があり、その際は自分たちで調べて対応しました。
佐用さん:やはり新しい技術を取り入れる際にはエラーはつきものですので、何度か体験はしましたが、それを解消できずに困ったことは特にありません。
当社で開発したロボットはそこまで複雑なものではないので、どこでエラーが出たかはだいたい分かりますし、エラーが出た場所が分かればそこから原因を突き止めて対処はできます。
こういった経験も社内で蓄積して、今後の開発にも活かしていきたいと思っています。
佐用さん:やはり「時間の削減」と「作業を正確にできること」です。今まで手作業や目視で行っていた業務の工数が減り、正確性も上がるのであれば、安心して他の業務に取り組むことができます。
また、データ連携もスムーズに行えることがメリットです。
異なるベンダーのソフトウェアや基幹システムなど、多くの会社では複数のシステムが動いていることがあります。一般的なイメージですと、それら複数のシステムを繋げることは難しいように感じますが、RPAはシステム間でのデータ連携がスムーズに行えますので、その点で非常に有用だと思います。
ですから例えば、「ベンダーが違うシステムどうしは繋げられない」と思っていらっしゃるお客様に対しては、「RPAなら連携できて便利になりますよ」とお伝えすることもあります。
社内の業務効率化とともに、RPAの良さを顧客にも伝えたい
佐用さん:営業部で行われている業務を自動化できればと考えています。
現在、原価表のようなものを手作業で作成し、その後システムへ手入力をおこなっています。それを例えば、データが自動的に販売管理に反映される、というような自動化ができれば楽になりますよね。
他にも、探せばまだまだ社内でRPAを導入できる余地があると思います。ですから今後も随時自動化を進めていく予定です。
そのための改善点としては、現場からの意見の吸い上げができる仕組みづくりでしょうか。現場から「こうした方がいいんじゃないか」とのアイデアが自然に集まる仕組みを作れると、もっと社内全体でRPAは活用できると思います。
佐用さん:RPAのメリットを体験した立場からお話しすると、業種は限定することなく、さまざまな業種のお客様に使っていただきたいと思っています。
既存システムとの連携が非常にスムーズにできますから、今の環境にRPAをプラスするだけで業務効率化が実現できます。
社内で蓄積した知見なども紹介しながら、RPAの良さをクライアントの方々にも伝えていきたいと考えております。