北海道札幌市に本社を構える「株式会社日本ファシリティ」は、多店舗展開する企業の施設管理業務の請負をメインに、不動産事業や業務の一元化システムの提案なども行う企業です。
同社は2018年の10月から社内業務にRPAを導入。顧客が増えるたびに膨らむ事務処理をロボットに代行させ、大幅な業務効率化に成功しています。
今回は、同社にRPAを導入する際、検証や開発、実装に携わった管理部の鷲津真里奈さんに、 導入の経緯やその後の変化についてお話を伺いました。
企業名:株式会社日本ファシリティ
URL:http://www.nifa.co.jp/
導入したRPA:SynchRoid(ソフトバンク)
自動化した業務:報告書の自動処理、Webからの情報収集
導入前の課題:クライアントごとに発生する手作業の事務処理で現場が逼迫
導入後の変化:カスタマーサポート等、人がやるべき業務に余裕を持って取り組めるように
雪だるま式に膨らむ事務処理の効率化を目指しRPAを導入
鷲津さん 当社のメイン業務は施設管理です。固定資産から消耗品、セキュリティ、衛生まで、施設にまつわるあらゆる管理業務を一元化して引き受けています。
顧客は主に、多店舗展開するドラッグストアや家電量販店などです。全国展開しているところも多いため、当社で管理している施設の数は3,000以上に及びます。
その施設管理業務では、一件一件に対して、事務処理が発生します。例えば、現場から送られてくる報告書を所定のフォルダに入れることなどが当てはまりますが、その作業は、管理する施設の数に比例して雪だるま式に増えていきます。もちろん、事務処理が増えれば、そこに投じる人の数も増えます。
RPAを導入する以前の当社では、このように、事務処理の膨らみに従業員の手と時間を取られるという課題がありました。
そこで、単純作業を自動化して業務効率化を図ろうと、RPAの導入に至りました。
鷲津さん 最初はVBA(Visual Basic for Applications:Microsoft Office製品で利用できる拡張機能。プログラミング言語を用いて組んだプログラムを実行すると、Excelなどでの処理を自動化できる。)を使って事務処理の自動化を試みていました。
しかし、VBAではカバーできない処理も多々ありましたし、何より、プログラミング言語が分かる従業員でないとエラーに対処できないという課題がありました。
そこで、もっと簡単に自動化ができるツールはないか?と探したところ、RPAに行き着きました。当社では、Softbank社が提供する「SynchRoid(シンクロイド)」というRPAを使っています。
鷲津さん 「社内で使っている独自システムとの連携」です。
本格的な導入の前に、3ヵ月ほど他のRPAソリューションと比較検証する期間を設けました。その期間中、実際に社内でテスト開発を行ってみたところ、最も精度良くロボットが動いたのがSynchRoidでした。そのためSynchRoidが採用されました。
社内の独自システムとの連携で年間4500時間の削減に成功
鷲津さん 先ほども少しお話ししましたが、現場から送られてくるあらゆる種類の報告書を所定のフォルダに入れる作業です。
社内で使っている独自システムがあるのですが、そこにSynchRoidで開発したロボットを連携させて報告書を自動登録できるようにしています。
この作業は人の手で行うと1回2〜3分かかりますが、ロボットでは20秒程度です。しかも人的ミスもないため、大幅な業務効率化となりました。
他にも例えば、商材に関する情報をWeb上から取得する作業も自動化しています。
以前は500点以上の商材に対して、複数のWebサイトを目視で確認して情報をまとめていたものですから、その負担は大きく、何か情報にアップデートがあってもすぐには反映できませんでした。
しかし、ロボットで自動収集をするようになってからは、常に最新の商材情報が手元にある状態を作れるようになりました。
この2つの業務を自動化できたことが当社にとっては好影響でしたが、他にも、定刻になったら電話を転送設定に自動で切り替えたり、見積りの作成も自動で行っていたりします。
このように、社内の業務を順番にRPAで自動化していった結果、導入前と比較して年間で4500時間が削減できるようになりました。
鷲津さん 人がやるべき業務に、ゆとりを持って取り組めているように感じます。カスタマーサポートがよい例です。以前は事務処理に追われながらの電話対応をしていましたが、RPA導入後は、お客さまからの問い合わせに対してより傾聴し、丁寧に対応できるようになりました。
従業員のストレスも減っているように見えますし、社内で何か新しい取り組みを始めようとなった時も、そちらに集中できるようになりました。
事務に携わる女性が積極的に開発
鷲津さん 当社が使っているSynchRoidに限ってのお話になりますが、プログラミング言語に明るくない方でも開発できると思いました。私もプログラミングに関しては、当時あまり知見がありませんでしたが、基本操作はe-Learningで覚えることができました。
SynchRoidは基本的に、ノンプログラミングでロボット開発ができます。
SynchRoidを立ち上げながら、ExcelやWebページ上で自動化したい作業を1回手動で行えば、その工程を記憶してくれるからです。そうすれば次回以降は自動処理ができるようになっていますから、ロボット開発の工程と言えば「普段、PC上で行っている作業をするだけ」です。
このように簡単な操作で自動処理のロボットが作れるので、当社では事務に携わる女性が積極的に開発に関わってくれています。
鷲津さん 基本操作に慣れるまでは、1時間ほどかかっていた記憶があります。
自動化させる作業の範囲にもよりますが、今では簡単なロボットであれば、10分ほどで開発ができます。
開発中、どうしても解決ができないところが出てきた場合、SynchRoidのプレミアムサポートを利用して専門の方のアドバイスを受けることができます。
しかし基本的には社内で完結できる仕様ですので、プレミアムサポートを使ったことは数えるくらいしかありません。
今後の活用について
鷲津さん Web上から商材情報を取得し、見積りを作成するところまでは自動化できています。今後は見積りの送信まで自動化できるようなロボットを開発したいです。
SynchRoidはボタンを押すという動作が非常に精度が高いので、メールやオンラインFAXの送信ボタンを押すことを覚えさせれば、自動送信ができると思います。
その他にも自動化できる業務があれば、どんどんRPAを活用していきたいと考えています。
当社では事務に携わる従業員が「この処理を自動化してはどうか?」とアイデアを出してくれることもあります。そういった現場の声をうまく取り入れながら開発を進めていきたいです。